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2009年2月28日 (土)

カメムシの話①

 自分のちょっとした気紛れで他の生き物を殺してしまう話は鴎外の「雁」、これは投げた石が雁にあたる、だったか。それから志賀の「城之崎にて」、これもやはりほうった石がイモリを殺してしまう。
 不意に死を迎える、その姿を人の命の儚さになぞらえたものか。
 私にとってはむしろ、その行為そのものが問題で、自分のわずかな挙動でひとつの命が消えるということが怖かった。そういうことに一番敏感だったのは東京で始まった浪人時代だが、以降、無用の殺生はしないを唯一のポリシーにしていた。だから害にもならない虫を平気で殺す人間も嫌いだった。
 大学生になった時、喫茶店で窓から外に出ようとする蜂を何のためらいもなくライターで焼き殺した級友を見てひどく嫌悪感を覚えた。それからずっと彼には距離を置いた。部屋の中の蚊を両手で包むようにして外に出していた人、向こうにいた時一緒に山に行っていたSさんの真似はできないが、できる限りは、と思っていた私の信念を砕いたのはカメムシ。

 

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