鶯
夜中目覚めて、聞こえてくるのは、冬なら風が窓を打つ音。春になれば、雨が屋根にあたる音、樋から池に水が落ちる音、そして今夜は蛙の声も混じって聞こえた。周りの田が掘り返され、冬眠していたのが出てきたようだ。眠れないと諦め、コーヒーを作りに階下に行き、ついでに母の部屋をのぞくと、小さな鳥が飛び回る。雀より小さく、色も茶色でない。鯉を救うタモを納屋から持ってきて、部屋の天井付近の四隅を鴨居に止まりながら逃げ回る先にタモを構えると、その縁にも止まる。全体灰色に薄緑がある、鶯のようだ。窓を全部開けて、追いまわしているところに父が来て「まだいるか」と言う。昨日の夕方に入ってきたと言う。昨晩私が気付かなかったのはテレビの後ろでも潜んでいたからか。明るくなれば自然と窓から出ていくと言って父はまた寝床に戻る。私も窓を閉めタモを玄関に片づけて台所に行くと、今度はそこで飛び回っている。明るくなった勝手口の窓から出ようとしているようなので、すかさず開けたが、別の方に飛んでいく。けれどそれを追いまわすと、ようやく今開けた勝手口から出ていった。「やれやれ、フー、だ」と鶯は思っているだろう。「人間が二人出てきた時はさすがの俺も万事休すだと観念したぜ」と仲間に語るに違いない。
| 固定リンク
« 感受性 | トップページ | 500回目の春が来る »
「犬に如かず、虫に如かず」カテゴリの記事
- オッドアイ・Tの猫とその一味(2020.04.12)
- たぶらかされているのか(2019.10.10)
- ジャカルタ、マニラ(2019.09.23)
- Tの猫(2019.09.17)
- 猫と犬と壁打ち(2018.09.09)
コメント