« 一葉に如かず | トップページ | 千国 »

2010年11月20日 (土)

齧られる覚悟で

 天気が良いと山を想う。黄砂も無いと朝のニュースで聞いて準備を始めた。地元の山、光兎山に登るのはこの九年で十回目。初めて登ったのはここに戻った33歳の秋、文化の日。秋に登るのはそれ以来のことだ。中学生の時、学校行事で光兎山登山があって、登山口から雨。校長が雨具を忘れた者を前に出させて、その中に僕もいた。カッパが必要なことは準備段階から気になっていたが、買ってくれとは母に言い出せなかった。そんな風に惨めな思いをしたことは少なくない。結局その時は途中で全員引き返したので33歳が初登山になった。光兎山は啄木の謳うところのふるさとの山、私の家から間近に見える山。
 この頃熊の出没が多く、まあ出くわしたら仕方ない、正々堂々勝負してやろうという覚悟で出かけた。けれども僕が齧られれば僕だけの不運に終わらず、大規模な熊狩にでもなってズドンとやられたんでは気の毒なので、鈴を付けていく。この鈴は母が笹取りをしていた時に使っていた物で、僕が新発田の金物屋から二千なにがしという、この種の鈴としてはかなりの高額で買ってきたのだが、高いだけあって音色が違う。山一帯に響き渡る高く澄んだ音。その鈴をチカランチカランと鳴らしながら秋の光兎道をひとり歩いた。久しぶりの一人の登山。徒党を組めば娯楽に堕すが、独り登るは修行に似ていると改めて思う。
Img_0001_56
Img_0002_16
Img_0003_12
 また改めて思うことは、この山が「日帰り一級」の山であること。登山道が単調でなく且つ美しい(40分程度歩いた分岐からブナ林が現れ、様々な趣ある姿で迎えてくれる)。また単独峰であるので眺望が素晴らしい(東北の名峰、飯豊は間近に、朝日連峰の稜線を追うこともできる)。登山口は二つあるが、中束口には三台の車、会ったのは4組7人。予約も要らずかつ無料で、気が向いた時に行ける山。少しの努力で全く別の景色が見れる。それが始まり。努力に見合った景色しか見れないと思うのが次の段階。山に限ったことでなく。

|

« 一葉に如かず | トップページ | 千国 »

雲の湧く稜線に」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 齧られる覚悟で:

« 一葉に如かず | トップページ | 千国 »