« 大寒(セキレイ) | トップページ | こし餡派 »

2011年1月22日 (土)

刹那の逃避行

 大勢で集会場の雪下ろしをしてから車庫の屋根に上っていると、犬の吠える声がした。うちの犬の声でなし、H家とは方向が違うと思っていると、犬種は忘れたが、黒くて艶のある短い毛で体は細長く、耳の垂れているのが私の家に向かって吠えるのが見えた。Y家の犬のようだ。この集落には今三匹の犬しかいない。死んだY家の犬もK家の犬もそうであったが、偶に逃亡に成功するとほとんど犬仲間の家に来て、そこの家人にあっけなく捕まり飼い主に手渡される。私の存在に気付かないまま犬は雪の壁で挟まれた道を進んでくると、首から引きずるロープも見えたので逃げてきたのに間違いない。そして作業所に入って、すぐには出て来なかったから、Tの猫の餌を見つけて食べているのだろう。たったさっき雪下ろしを始めた頃にTが食事を運んできたばかりである。そこから出てきた犬はまた玄関に向かってひとしきり吠え、吠えながらも盛んに尻尾を振るので、束の間の自由に大いに愉悦を大いに感じている風だ。名前を知らないので「こら、黒すけ、黒助」と呼ぶと高い所にいる私を見つけて二度吠えたが、興味はないようで、玄関前まで行って中を覗く素振り。それから私の車の後ろで二三回くるくる回ると脱糞か放尿をした(後で見ると見事な糞であった。刹那の逃避行の最中、わずか数秒でこれだけの物を滞りなく排出するとはと感心)。そして台所の裏戸に廻って私がTの猫とぶた猫に出してやる餌皿に鼻を突っ込んだ。多分私らが山で熟れたアケビを見つけた時と同じで、その発見が嬉しくて大しておいしくなくても食べてしまうのであろう。犬は今度雪原に突進、泳ぐようにして歩いて、ちょうど私が雪下ろしをしている車庫を回るあんばいになったので、雪玉を作ってぶつけてみた。驚いたんだか、そうでもないんだが、はっきりしないリアクションで、ちょうど柿の木の下を通る時、その枝に雪玉が当たると枝に付いていた雪がぼたぼたと犬の背中に落ちて思わず私は笑ったが、犬はこれもまあ大したことにも感じない様子で、また落ち着きなくうろうろして時々意味もなく吠えて、その内いなくなった。どうも出来のよろしい方ではないなと思った。こうやって犬に妨害された雪下ろしは思うように捗らず、納屋は明日ということにした。
 

|

« 大寒(セキレイ) | トップページ | こし餡派 »

犬に如かず、虫に如かず」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 刹那の逃避行:

« 大寒(セキレイ) | トップページ | こし餡派 »