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2011年3月28日 (月)

追認(掛軸泥棒)

 泥棒が入ったと母が言っている。座敷の掛け軸なんかが無くなっていると。母は元気な頃の母で、そう私に教えると盗られた物に未練はないようで外に出ていく。確かに座敷に何があるわけではないと思いながら襖を開けて見ると、畳の上敷きの一ヶ所が凹んでいて、そこには足跡のようなものがついている。それを剥ぐと半畳分の床に方形の穴が開けられていて床下が見えている。つまり床下から侵入して床に穴を開けて入ったらしい。宝物のある家に見えたのかと私は首を傾げる。掛け軸なんかは祖父が行商から買った安物ばかり数本、その他ガラクタ以外はない。なにを根拠にこんな苦労して侵入したのかと思いつつ、もしかしてまだ床下に隠れてはいまいかと、腹這いなって覗くと、北側の方が明るくて、どうやら人目につかないそっちの方から床下に入ったらしい。そして夢が覚めてから私が考えたのは、いつ入ったかという事。床下に潜りこむのにも床に穴を開ける際にもかなりの音が出る。父は耳が遠いにしても、この部屋の隣は壁を隔てて父の寝起きする部屋。南には一部屋置いて母の部屋だが、母の耳は悪くはない。また、座敷のすぐ上は私の部屋だから、夜だったら少しの物音でも聞き逃すことはないだろう。となると、夜の仕事でなく、母が施設に行っていない日中のことだろうかと。けれどそれなら父が車で出かける時を見計らえばよいわけで、こんな大掛かりな手段は必要ない。臆病な犬が一匹ソファの下に隠れているだけで、数回吠えてもすぐもっと奥に潜り込む。
 夢で見たことは現実に裏打ちされていることではないが、夢の世界では実際起きたこととして私は夢の中で受け入れている。覚めてから、それを現実の世界と対照する作業が面白いと思うのは、実は現実の世界も夢同様、起きた事を認めていくしかないからだと思う。つまり追認慣れしている。

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