« 黒い犬は見づらい(入院) | トップページ | 御免(政治) »

2011年5月24日 (火)

あれを持ってたら(池袋のハーモニカ)

 東上線の和光市に五年住んでいたし名画座の文芸座もあったので池袋には結構思い出がある。これも前に書いたような気もするが、今朝風呂に入っていてなぜかまたふと思い出したので書いてみる。北口から南口に抜ける地下道が駅の外の東側にあって、地下道といっても、山手線や私鉄の線路の下を潜る半地下というべきなのかもしれないが、その出口が半地下だから緩やかな坂になっていて、ある日そこにハーモニカを吹く、かなりの年齢の男の人がいた。盲目であったことが僕の足を止めたのか、身なりが薄汚かったことがそうさせたのか、僕はしばらく立ち止まって聞いていた。古い歌謡曲とか童謡とか、そんな類のメロディをずっと吹いていた。僕の他に誰も立ち止まるような人はなくて、だから僕も少し離れて立っていたような気がする。突然演奏止めたかと思うと「すいません すいません」と彼は言い出した。僕が近付く気配を感じるとお酒が飲める所に連れていってほしいと言うのであった。僕が案内したのは牛丼屋で、そこでお銚子を一本か二本吞んだろうか。今でも良く覚えているのは、彼の手の傷で、完治していず、抜糸もしていない状態であった。また、小さい時別れた姉を探しているとも言っていた。そして酒の代金を払ってやると、今日はいい人に出会って良かったと何度も繰り返し言った。僕に言うというより独りごとのように言ったその言葉が忘れられない。僕でなくても僕の友人なら僕と同じことをしたと思う。少なくとも僕はそんな友人としか懇意にしてこなかったつもりだ。でも長く生きてくると誰もが僕と同じ行動は取らないと分かってくる。だから彼も今日はいい人に出会ったと言ったのだ。けれど、それは生き方のスタイルみたいなもので、良いとか悪いとかでなく、好き嫌いに属する範疇。性善説とか性悪説でもいいが、それも終局スタイルで、ただ僕が好きか嫌いかだけのことなのだが。「あれを持ってたら うー付き合いたい」忌野清志郎的に言えば。

|

« 黒い犬は見づらい(入院) | トップページ | 御免(政治) »

追認」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: あれを持ってたら(池袋のハーモニカ):

« 黒い犬は見づらい(入院) | トップページ | 御免(政治) »