カメムシ通信
昨日は予報の外れた晴天だったが、今日は朝から雨、ガラス戸を鳴らして消え残った雪に霙混じりの北風が吹きつける。こんな空ならいっそ雪が良いと思うのだけれど、積もればまた面倒だから、降るより良いとは思うのだ。叶えられない希望を言って私らは従順に今日の天気を受け入れる。能化山ものっけから中止。ああ、先週の今頃は晴天でガリガリ凍った浅間山を登り始めていた。関東は今日も透き通るような青空が広がっていると天気予報は言っていた。どうだろう、私らは岩屋の中の山椒魚で、生涯ここから出られない。蛙と和解する最後の場面を晩年になって井伏は削ったけれど、私はそれがリアリティだと思っている。
先週は珍しく出張があって、久しぶりに靴箱から革靴を出した。戻ってきて靴を脱ぐ時、ぽろっとカメムシが落ちた。つまり一日、圧死したカメムシを靴の中に入れていた。出張先でも、昼食を買ったコンビニでも、携帯を落として壊して寄ったドコモでも、カメムシの入った靴を履き臭気を密かに拡散していたことになる。先週の登山の片付けの時にも靴袋の中にカメムシがいた。これも重い登山靴がのったのでひとたまりもなかったのだろう。彼等もまた山椒魚だと思うのだ。
| 固定リンク
« タロになれジロになれ | トップページ | 聞いた話 »
「犬に如かず、虫に如かず」カテゴリの記事
- オッドアイ・Tの猫とその一味(2020.04.12)
- たぶらかされているのか(2019.10.10)
- ジャカルタ、マニラ(2019.09.23)
- Tの猫(2019.09.17)
- 猫と犬と壁打ち(2018.09.09)
コメント