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2012年4月18日 (水)

くまくんの破門

 動作の鈍くなった父は折々犬を逃がしてしまう。普通の犬なら逃げたりしないし、たとえ逃げてもすぐ飼い主の元に戻るのだろうが、ひとつも二つも足りない犬は、いくら呼んでも大声で叱っても全く無視して自由を満喫している。以前のように遠くは行かず、家の周りをうろうろしているだけだけれど、捕まえようとすると逃げる。麻酔銃が欲しいくらいだ。それでも玄関の戸を開けておくと9時頃には腹が減ってか自ずと家に入ってくるのだが、それまで寒風が吹き込むし夏なら虫が入ってくる。玄関の戸を開けておくからいつでも入れると思って逃げるのだと父は言い、玄関の戸を閉めることにしたと一昨日言っていた。一種の破門だが、果たして我慢できるか。どうせ母のおしめを取り替えに起きる時に、玄関の戸も開けるのだろうと思ったが、今夕戻ると戸外に遊ぶ犬に吠えられて迎えられ、宣言通り玄関の戸は閉まっていた。私の顔を距離を置いて見ている犬に入る気はなさそうなので、私も戸を閉めた。ずっと閉めておいても車庫の犬小屋で寝るだろうと父は言う。ところが、この犬、ひとつも二つも足りないようでいて、全くの馬鹿ではないようで、9時過ぎになって突然吠えだした。遠吠えをし出した。外を窺ったが、誰か来た気配もない。つまり、家に入れろというデモンストレーションの声なのだ。近所迷惑なので我慢もできずに見に行くと、案の定玄関の前の暗がりにいた。来い来いと呼ぶと、今までにないことだが、素直に中に入ってきた。この犬は自分の住んでる世界をなめて生きるだろう。それで通ればそれが幸せか。

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