柏矢町から
今堤防は黄色の舌状花で染められている。ブタナ。こっつらにっくいような名前。花言葉は「鈍感な奴ほど自信家で大きな顔をしている」
予定通り行けば、三度目の上高地になる。最初は涸沢で何日も雨で逗留、挙句に撤退。二度目は常念、槍、穂高と五泊の縦走の最後に下りた場所。去年も上高地に行く予定を立てた時から二十数年も前のことを思い出して、忘れていたことを思い出す一種の清新さに文章を書いたけれど、今ここに書くのは、去年思い出してまた忘れていたことを今新たに思い出したような気持ちで書くとしたら、なにか滑稽で面白い。
初日は柏矢の駅から延々一般道を歩き、常念の山麓の川原でテントを張った。二日目は大天井、次は槍、次は奥穂、そして最後は上高地のロッジに泊まった。思い出せるのは写真があるからで、フィルムだから沢山はないが、その写真を頼りに記憶を探り当てようとする。滝のような下痢、自販機の一件、奥穂の頂にパチンコ玉をひとつ奉納したことなど、つまらないことだけは写真がなくても良く覚えている。
本当は良くは分からない。なにが大事なのか。肩に食い込む荷の重さのためか、目に滲みる汗のためか。
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