今日だけのこと
今年一番の暑さだったという日、梶川尾根を登って門内を目指した。ガスった雪渓で道を失い、小屋まで引き返したのは何年前だろう。確実に現在は過去になる。滴る汗は地面に消える。急坂を這い上ること六時間、梶川峰に出る。草原の稜線、どんな人生も全肯定される風景が広がる。私が目指したのは、生きている場所を見下すところ。そんな桃源郷は私の中にも存在しないのに。そして、門内岳の西に続く尾根、今は廃道になった胎内尾根に際立ったピーク、二ツ峰が翌朝の目的地。道跡は幽かにあると聞いたが、ジンダケの密藪で罠に掛かった獣のように身動き取れない有様になった。結局最低鞍部を少し行った所で音を上げて、挫折感を雪渓の周りに咲く花を撮ることで慰めつつ登り返したのである。行くも帰るも同じ困難、帰りが近いのは今日だけのこと。
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