あなたの分まで
飯豊を端から端まで縦走した時に、若い時しかできないことがあると言って、御沢のキャンプ場まで送ってくれた。4日後、大熊尾根を下っていくと、へつりの向こうに佇む人影があって、まさかこんな所まで迎えに来てくれるとは思わないから、我々が通るのを待つ登山者かと思ったが、冷たいビールを持って待っていてくれたのである。それが西俣、まだたった六年前のことだ。ダイグラ尾根の吊橋の袂に父の急を告げる書置きを残してくれたこともあった。誰よりも世話になった。なんの恩返しもしてないのに、困るんだけどな。まだ十年は講釈を聞くつもりでいたのに。
「いやいやいやいやいやいやいや」先頭を行く彼の声。真っ先に稜線に出て、展望に感嘆する声だ。情熱の分しか感動できない。思い入れの分しか。今度はあなたの分まで我々が快哉の声を上げよう。(2004/9/26以東岳)
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