老若男女富士に登る
富士山だけは行かなくて良い山だと思っていたが、会としては行っても良いだろうと思い直してもいた。ハミングの新潟以西の山だとあちこちで参加者を拾って行くので県内を抜けるのに通常の倍くらい時間が掛かるが、村上観光だと近辺三ヵ所だけなのでそう手間取らない。その村上観光が富士山ご来光ツアを募集していたので申し込んでいたのである。ただご来光は気に入らない。なぜ暗い夜中に登ってまで日の出を見たがるのか、僕には全く理解できないし、そもそもご来光というのは元日の日の出、つまり初日の出のことだ。まあいいさ、10㌔走でもマラソンと云う。
一度でも経験したくないこと、一度なら経験しても良いこと、何度でも経験して良いことの三つに経験を分けるなら、富士登山は二番目だ。それに、気の置けない山の仲間も一緒だから、どんなに人が多くても怖気づくこともないだろう。4.55バス乗車、11.40混みに混んだ吉田口5合目駐車に到着。バスは寝られるから有難い。
六合目から覚悟を裏切らない数珠繋がり。七合目の山荘で3時間の仮眠。夜の10時、頂上目指して登山開始、闇の行列が各自のヘッドランプで光の線になって続く。僕は仮眠する頃から頭痛がして、バッファリンを飲んで寝たのだが、歩き始めるとめまいもして、登るにつれ足元が覚束なくなるのが自分で分かった。つまり高山病だが、20代の頃Sさんと北岳に行った時に具合が悪くなって、これが唯一経験した高山病で、一度かかれば二度はかからない、免疫みたいなものができるのだろうと思っていたから予想外のこと。渋滞して立ち止まる時、ストックに寄りかかって目を瞑り、はっとして目を開けると前の人が何mも先にいるというようなことを繰り返していたが、もう限界だと前を歩いていたYの肩を叩いた瞬間激しい吐気に襲われて、道の脇に倒れ込むようにして吐いた。幸いだったのはザックの横にビニール袋を差し込んでおいたので、忌憚なく吐けたことである。添乗員、ガイドが駈けつけてくれて、下の山荘に戻って10時30分までバスを降りた駐車場に戻るということになった。Yには一緒にいてもらって、風邪気味でかなりばてていたМさんも同行することになった。IさんとAKにはそのまま行ってくれと言った。しかし、幸いにも10分くらいも横になっていたら吐いたお蔭で吐気が収まって、これなら登れるという気になった。ツアのペースは至極ゆっくりなうえにすぐ渋滞で立ち止まるから、遅れた分はすぐ取り返せるだろうと思えた。重いカメラをYに持ってもらい、ついでにザックも交換して出発、しばらくすると案の定、上の方の暗闇に注意を喚起するガイドの甲高い声が聞こえた。ツアーが休憩している所に追い付いて、合流する旨をガイドに告げると彼はとても喜んでくれてIさんもAKも寄ってきた。二人とも残してきた仲間が心配であったし心細かったに違いない。そんなわけで五人揃って初めての富士山頂に立てたことに感謝する。写真一枚目は七合目辺り、二枚目は頂、後ろは奥の宮に並ぶ人並み、三枚目は下りの行列。それでも僕らは言うだろう。富士山なら素晴らしい。一度は登ってほしい山だ。
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