黒姫山
他に人のいない表登山口から登り始めて、「あな珍しや麗しや」あまたのシロバナ
エンレイソウに迎えられて喜びしも束の間、硬い雪の残る斜面は急となり、アイゼン
履き、ピッケル突く厳しい登行にあいなりて、あな辛しあな恐しの声が漏れるばかり
なり。されど振り返ればかのナウマンゾウの化石発見の地として名高き野尻湖、それ
を抱えた北信濃が眼下一望、あな嬉しの声。あな嬉しあな辛しあな怖しと徒に時間ば
かり過ぎ、頂に立ちたる時は日は既に中天を過ぎたり。かくなるうえは登ってきた左
の尾根が緩やかそうに見えたので、そこをば一気に駆け下りて戻りましょうと性急な
意見もございましたが、待て待て待て!緩やかに見えてそうでないのが人の世の常、
山の常、もし万が一、迷ったり引き返したりすれば確実に黒姫の黒い帳が降りてく
る。ここはひとつ稚児でも難なく登ってくるという古池コースで下ってはということ
に相成り、甚竹の中を徘徊する熊に齧られるような目にも合わずにタクシー待つ登山
口に無事着いたのであります。
カラマツの新緑の中を進むとかたやハルゼミ、かたや
シロバナエンレイソウ
雪多く硬くなり、斜度も増しアイゼン履きし黒姫山
14時を回ってようやく登頂。写真は高妻。妙高、火打、そして北アルプスの山並みも遠望できた。
飯縄山を見ながら下山
戸隠、高妻、乙妻山
中央奥に雨飾が見える。
先頭の綿野舞さんが熊避けのために即興の歌を歌いながら下る。褒め上手の女性二人もそれを続けさせるほど褒められなかったので、ジンダケの笹薮が消えるとともに歌声も消えていった。
黒姫にむなしく響く熊避けの歌
北信五岳 熊も去りなん
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