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2019年9月17日 (火)

Tの猫

  車庫をねぐらとしていた二羽の燕は猫の餌食となった。六月の終わり、最初一羽が来なくなり、車庫の隅に羽の残骸を見つけて猫の仕業と分かった。こういうことにならないよう、いつも夜は閉めておくシャッターも閉めないでおいたのだが、バラバラになった羽を箒で集めながら残念で仕方なかった。そして、もう一羽もいつもの場所にとまっていない夜が来て、やはり羽の残骸を見つけ、車庫にもう燕は来ることがなくなった。どうやって猫が捕ったか分からないが、猫に対する面白くない感情が生じた。
 家を少しずつ片づけて、その荷物を農作業所に運ぶと、乱雑だった農作業所が更に乱雑になった。意を決して片づけ始めると、あちこちの隅で十年、二十年と溜めた猫の糞に出くわす。去年犬の居る車庫を片づけた時も沢山の糞があったが、それを遥かに凌ぐ量であった。Tがここに餌を運び始めたきっかけは多数匹に増えた猫の中の、仲間外れにされた猫をここで飼い始めたことだそうだ。いずれも無償ではないが、犬の散歩や病院の送迎を頼んでいる手前もあったし、その頃は母が倒れ農業を止めて作業所も使わなくなってしまっていたので、父は看過してきたのであろう。私も特に支障はなかったが、この夏、また子猫が二匹と三匹とで生まれ、この作業所と納屋とで何匹いるのか見当もつかないぐらいになった。夜中の猫の喧嘩、さかりの時期の鳴き声、それらに反応して吠える犬などは大概夜中のことで、車庫の脇の物置にしまっておいた物に小便をかけられたり、時折家に入り込んで食べ物を漁って散らかすこともあったりして、だいぶ煩わしくなってきた。そんな時に、この大量の糞尿に出くわし、出来る限り片づけて、猫の居場所に適さないようにすることにした。父が木工をしていた時の大型の機械は動かしようもないが、捨てられる物は軽トラックに積んで処理場に運んだ。二階も同様にひどい状態だったので、ある程度片づけてから猫が上がれないよう階段に網を掛けた。完璧にすると自分が上がれないので、易々と上がれない程度で良い。ある程度片づけてから通販で買った顆粒の猫忌避剤を隅々に撒いたが、この上で猫が昼寝をしていたから利き目は期待しない。Tに犬の散歩をしてもらっている手前、全部の猫がいなくなることは望んでないが、せめて生活の基盤はここから移ってもらって、餌場としての活用だけというのが今の目標である。
 家で飼われ、内外を気ままに過ごす猫が大半なのに、更に追い打ちをかけるようで、済まない気もするが、私はやはり聖人にはなれない。達観も得られない。出来る限りかたずけておいて、なにかあった時に、出来るだけ迷惑をかけたくないという、世俗的な世間体が優先する。
 その後、掃除した作業所に新しい糞が見つかって、Tに話をして、作業所の戸を閉めることにした。父親の糞尿だけでも沢山なのに、猫の糞便までは手に負えない、なんてことまでは言わなかったが。
 作業所を閉めてから、休みの日に二階から観察していると、かTが餌を運んでくる午前10時頃と午後6時頃にはぞろぞろと猫が餌を求めてやってくる。餌場は作業所前と作業所脇の冬囲いの資材を積んだ小屋と昔牛を飼っていた納屋の三ヵ所で、二階の窓から観察できるのは作業所前だけだけれど、五匹か六匹やってくる。この五匹か六匹が他の二ヵ所の餌場を掛け持ちしているのか、それぞれの餌場にまた別にいるのか分からないが、この五、六匹の中に今年の夏生まれたはずの子猫は混じっていないから、その総数は容易に推し量れない。そして食事を終えるといずれかに消えていく。私の家の周りを定宿としているのは多分二匹。Kの家は私の家から田を隔てて百メートル以上も離れているが、Tの猫が三匹、作業所に住みついていると言っていた。食事の時間になると安久家まで行くらしいと。
 

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