雪の残る山に入ってマンサクを見れば春はくるらし、と思う。その年初めてのハクサンコザクラを見つければ、確かに今年も夏が来て、と思うのである。季節と場所を限って咲く花を見ることは生きている証、過ぎていく時間の証。悔いと諦めとわずかな希望の証。
シャガという変な名はこれに似るヒオウギの中国名「射干」(扇)に由来するらしい。淡い微妙な色とその変化、この種の花の複雑な形。悪くない花だ。